イカセカイ

《イカセカイ》(2023)
3240×1300mmキャンバス、イカ墨、油彩、マイカ

巨大なイカがイカを共食いしている様子。
オスのアオリイカがメスのアオリイカを襲い始める最初から共食いを観察した。捕らえられたメスのアオリイカは墨を吹いて必死に逃げようとしていたが、ある瞬間から眼の力が無くなって、生き物から食べ物に変わった。画面上部にはイカ釣り漁船の集魚灯、下部には薩摩イカ餌木を配置した。
背景には、横瀬古墳の上から眺めた田園と太平洋を描いている。イカを釣ってきてくれたおじさんと子供の頃にいつも散歩していた場所で、イカ画家の原風景である。
円を描くように周りに配置しているのは、イカが絶命していく様子である。水族館で撮影された2分半の映像を資料にした。提供していただいた動画が撮られたのは自分の誕生日で、私が生まれた日に死ぬイカもいて、私が死ぬ日に生まれるイカもいるということを実感してこの作品を構想し始めた。イカの輪廻のように画題も回文になっている。イカを描き続けてきて、イカ好きとして伝えたいイカの絵と、絵描きとして描きたいイカの絵は別ということがわかってきた。イカの世界ではなく、自分の世界のイカを描こうとしている。